2005年11月23日

第87回 「日本の官製・温室的大学発ベンチャーの危うさ」

第83回のコラムでお伝えしましたように『日経ビジネス』誌の2005年11月14日号特集、「変だぞニッポン-虚妄の大学発ベンチャー:民営化時代のタックスイーター-」の私なりの感想を述べさせて頂きます。

内容は、日本の大学発ベンチャーは、税金を使った補助制度で維持され、大学発ベンチャーの定義が曖昧で、研究開発に失敗しても経営者や大学教員は、国からの補助金を返済する義務もないなどリスクを負う必要がないなど、ベンチャービジネスと呼ぶには相応しくないという主旨です。

そもそも、ベンチャービジネスとは

リスクを恐れず事業を展開しているという起業家精神を大前提に、①新規の市場を開拓するニッチ性、②事業そのものが新しいという新規性、③独創的な技術や商品、あるいはビジネスモデルであるという独創性、④潜在的ニーズがあると期待され事業の成長が著しいという成長性という要件の一部、あるいは、複数を満たすビジネスであるはずだから、政府から補助金をもらい、リスクを回避して“ベンチャー”と称するのはおかしいというのが同誌の主張の根幹でしょうか。

この状況を放置すると、大学発ベンチャーは、税金をタダ使うだけのタックスイーターと成り下がり、第2の公共事業になりかねないと警告しています。

そのための対策として同誌は、シリコンバレー幻想を捨て、各大学や地域における現状を認識した上での対応すること、各省が「産学連携(≒大学発ベンチャー)」を建前に予算獲得競争を止めることなどを提言しています。

各省庁の予算ぶんどり合戦が、その省庁の存在意義のバロメーターとなるために、予算獲得競争となっているのでしょうが、大学発ベンチャーのそもそもの発想は、バブル経済崩壊後のデフレ化と少子高齢化により税収不足、産業の空洞化がおこり、加えて、三位一体の改革などを背景に中央政府もさまざまな制度創設、改革、変更によってベンチャー企業育成ベンチャービジネスに白羽の矢が立ったわけですがそのモデルは、スタンフォード大学を中心としたシリコンバレーです。

大学発ベンチャーが次々誕生し、ベンチャー企業が次々誕生すれば、トム・ピーターズが『トム・ピーターズの起死回生』(仁平和夫訳 TBSブリタニカ 1998年6月)p.86で指摘されているように「4社は倒産、6社は赤字続き、6社はなんとか採算に乗る、3社は順調に発展、そして1社がバカ当たり」といわれているといわれているように倒産する企業もあるだろうが、大企業へ大化けするかもしれないという期待もあります。

日本における、産学連携による大学発ベンチャーは、1998年の「大学等技術移転促進法」(通称“TLO法”)が始まりで、まだまだ、10年にも満たない状況。同誌によれば大学発ベンチャーの本家本元のスタンフォード大学でも技術移転で成果を上げるためには20年の時間を要したとのこと。当たり前のことですが大事なことは透明性を確保し、検討する場を設け、改めるところは改める姿勢が重要でしょう。


この記事へのトラックバックURL

http://miyahira.ti-da.net/t593259
この記事へのトラックバック
「虚妄の大学発ベンチャー」報道、ようやく【夜明け前】at 2005年11月26日 01:37
「大学発ベンチャー企業は虚妄か?」に関連するブログ記事から興味深いものを選んでみました。ぜひ、読み比べてみてください。...
大学発ベンチャー企業は虚妄か?【ブログで情報収集!Blog-Headline】at 2005年12月03日 23:12
銀行さんのお顔の広いところでの
マッチングビジネスですね

技術や特許を銀行に信託して
その利用方法を銀行と企業で話し合うの?
大学と企業をお引き合わせするんですよね

いく...
まずは、九州大学と三菱UFJが特許信託【●マーケティング室よりトップマネージを目指すBlog●】at 2005年12月04日 16:42