2006年11月23日

第178回 「政策には信頼が必要」

政策が上手くいくかどうかにはいくつかの条件が必要です。その条件とは・・・

政府への信頼性、人々の期待、政策に対して国民が具体的行動を行う等々です。最も、これらの条件は、経済の局面で変化しますので、“万能”というわけではありません。

つい最近無くなったフリードマンは、量的に経済をコントロールするよりも、市場が信頼できるようなルールによる政策運営を提唱していました。

さて、加齢とともに失われる所得機会、加齢と共に増える医療費の備えに欠かせない年金の不祥事が相次いでいます。

たとえば、自分の年金が正しいかどうかを社会保険庁に問いただしたところ、約2割に誤りがあったのには驚きでした。

その結果、36万人6,000人の加入者が、年金記録の再調査を請求したそうです。

これらの請求にたいして誠意ある回答を行うのは当然のこととして、ミスの原因説明、再発防止、運用のあり方等の説明を行わなければ、とうてい年金に対する信頼が揺らぐばかりです。

そうなる、加入者に対して動揺を与えるばかりか、未加入者も増大し、年金制度の根幹も揺るがしかねません。

そうなると、“社会保険庁の解体”による仕切り直しだけではこの問題の解決は益々遠のくばかりでしょう。


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Posted by 宮平栄治 at 09:10│Comments(4)沖縄経済学
この記事へのコメント
 以下,長いコメント,お許し下さい.

 政策立案の時点でも,
「信頼性」が決定的に重要と実感した出来事がありました.

 多摩川の上流にある奥多摩湖で
訪問者(約450人)にアンケート(CVM)調査をしたときのこと.

 奥多摩の環境保全を目的とした基金が「仮に」創設された場合,
支払ってもいい金額を尋ねました.

 すると,多くの人が「ちゃんと運営してくれるか信用できない」という反応が・・・

 CVMは自然などの価値を推計する手法ですが,
私にとっては,
「政策主体の信頼なくして,政策なし」
を感じるツールとなりました.

 政府も研究者も普段(不断)の活動で信頼を得ないとダメですね.
以上
Posted by 旧汀志良次出身 at 2006年11月23日 11:46
 年金ですかぁ。たしかに信頼されていませんね。

 同級生と年金の話しをすると、「年金あてにしてると 死んじゃうぞ」ってところに落ち着きます。。。 今の生活で手がいっぱい先の事なんか考える余裕が無い。←(払う余裕が無い)なんて話しもあります。。 

 20代にはすでに宝くじ的な印象がついている・・・
Posted by 名桜大 幸喜 at 2006年11月24日 18:00
伊○先生

 基金についてのアンケートでにおける来訪者の方々の反応ですが、取引費用理論における「管理・監督費用」が見えないことも背景にあると思います。

 仮に基金ができたとしても、管理・運営する主体が誰なのか、適切に行われたどうかをどのように出資者へ報告するのか、適切・不適切な運営の定義は何か、不適切な運営が行われた場合の処置等々・・・

 今回のネタ本はA・グレーザー&L・S・ローゼンバーグ著 井堀利宏・土居丈郎・寺井公子訳『失敗する政府 成功する政府』(岩波書店 2004年6月)ですのでお読みになってください。


幸喜君へ

 同期生という狭い世界では、

 ”同級生と年金の話しをすると、「年金あてにしてると 死んじゃうぞ」ってところに落ち着きます”

となるかもしれませんが、日本全体では、11月25日の朝日新聞HP ”安倍政権に隠れた弱点 若者層、改憲より年金に関心”にあるようなことも・・・

 詳しくは、「http://www.asahi.com/politics/update/1125/002.html」を読んでね。
Posted by 宮平栄治 at 2006年11月25日 15:01
宮平先生

 ご紹介いただいた本,早速読んでみます.
ありがとうございます.

 確かに仮想評価法(CVM)について,
「管理費用・監督費用」の視点は本当に大事だと思います.

 一般にCVMの推計値(便益)は建設費等と比較して,
上回ることがほとんどですが,
管理費用・監督費用を含めた費用だと結果が変わるでしょうね.
以上
Posted by 旧汀志良次出身 at 2006年11月26日 23:48
 
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