2004年12月03日

第17回:情報は『こだま』のように響くもの

 前々回(vol.15 2004.11.19)は、シャトルバスを運行する際の条件として、シャトルバスの運行を希望する各店舗にホームページ作成と適宜の更新を義務づけることを述べさせて頂きました。今日のコラムではその理由を述べさせて頂きます。

 ホームページを作成する理由の目的は、もちろん情報発信が目的です。ライブを聴きたいと思う観光客に、「私の店舗はここにありますよ」、「私のライブはここが『売り』ですよ」等という必要情報を発信することで、遠隔地に暮らす観光客とライブハウスの情報の壁をうち破ることができるわけです。

 「いやいや、私の店は隠れた穴場を目玉にしたい」という戦略があります。ただし、その場合は、よほど多くの固定客が存在し、その固定客が頻繁に来店し、その店の給料や手数料を支払わない宣伝マンとして活躍してもらわなければなりません。宝探し的な店舗がいくつかあるのも観光地としての魅力でもあります。また、「一見さん」に邪魔されたくないオーナーやその店舗のクラブ会員にとっては大事な隠れ家でもありますので、それは聖域として確保される必要もあるでしょう。

 しかし、その他の店舗にとっては、事情は別です。ですから、チャイルドフッド社の『Cafe 100』が売れたのです。本来ならば、各喫茶店が情報発信しなければいけませんが、何らかの事情でそれができず、代理人としてチャイルドフッド社が情報を収集し、「こんな喫茶店あったらいいのに」という潜在客、「こんな喫茶店があったのか」という驚愕客、「全部の喫茶店を回るぞ」という制覇客、「『Cafe100』に載っていない喫茶店を見つけるぞ」というマニア客あるいは「『Cafe 100』に載った店へ行った」つもり客などの需要を喚起したと考えられます。

 情報化時代にあっては、価値情報を発信すると何らかの反応があるのですが、この現象を「エコー効果」と呼びます。ちょうど、山に向かって『ヤッホー』と叫ぶと『こだま』が返ってくるのと似ているからなのですが、もう少し、深い意味があります。

 たとえば、『こだま』は、私たちの声よりも小さい音量ですので、注意して聞かなければなりません。大海原や青空に向かっていくら叫んでも『こだま』は当然返ってきません。また、夏山のように、蝉がせわしく鳴いている山で声がかれるまで叫んでも、『こだま』は返って来ているのでしょうが、蝉の声にかき消され、聞こえません。つまり、情報発信は、場所、方向とタイミングを図って発信しなければいけないという意味が込められているのです。

 上記の条件に加え、最近では、いくら静寂冷涼な山々にむかってむやみやたらに『オーイ』と叫ぶのも慎まなければなりません。必要な人に必要なだけの情報を適宜に発信する必要があります。ちょうど、顧客のライフスタイルに合わせて、メールやダイレクトメールを発信するのと同じ理屈です。そうしないと、ジャンクメール扱いされます。あるいは、寝静まった夜に、酔っぱらいが大声で叫んでるような情報と見なされてしまいます。

 また、情報は『生もの』ですので、更新を怠ってはいけません。さらに、情報は、たとえば、本や自動車のように現物を手で触れたり試乗するということができませんから、実際に情報を受け取るまで内容が分かりません。そのため、事実だけを発信しなければいけません。誇張された情報で一時的に客が増えたとしても、その顧客が、実際に足を運んだとたん「情報と違っている」は論外で、「な~んだ、この程度か!」と思わせてもいけません。次の瞬間、ネット上では、その情報が瞬く間に流布され、客足が遠のいてしまい、門前雀羅の状態に陥りかねません。稼ぐだけ稼ぎ、客が気付いたときには店が無かったというやり方を『Hit and Run=ひき逃げ』商法といい、詐欺商法の一つと見なされています。

 情報化時代において、情報は使い方が正しければ、強力な経営資源になりますが、一歩誤れば猛毒へと変身してしまいます。取扱にはくれぐれもご注意下さい。


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Posted by 宮平栄治 at 00:00│Comments(0)沖縄経済学
 
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