2005年06月07日

第42回「たまにはこのような本でもいかがでしょうか」

出張で飛行機に乗るたび、旅客機は気になる本を読む格好の書斎へと早変わりします。今回も、5月27日(金曜日)から28日(土曜日)にかけて東京で開催された日本経済政策学会へ出席し、その帰路で、渡辺仁氏の『起業バカ』(光文社 2005年4月)という横文字ペーパバック風の本を読む機会が得られました。

内容は、日本におけるベンチャービジネス・ブームで起業をした人々が陥りやすい陥穽(落とし穴)を、起業段階では脱サラ別、主婦別に、離陸段階では発想法別、情報収集別、意思決定別に、起業後段階では組織別、社員別、あるいは、団塊世代の巨額な預貯金を狙った商法などを事例で列挙し、安易な起業を戒めています。このコラムをお読みの読者で、起業を考えていらっしゃる方にもご一読をお奨め致します。

と申しますのも、私にも脱サラで起業を目指す友人がいまして、その人達の話を聞いたり、アドバイスを乞われることが何度かあります。「絶対儲かる」と盲信し、「失敗はあり得ない」という自信満々な人が大半で、「もし、上手くいかない場合はどうするんだ」と質問しようものなら本人からは「せっかくやる気をおこしているのに水を差すとは何事だ」と怒られるし、その家族からは「事業を始める前から倒産の事を考えるなんて縁起でもない」と非難されます。私もめげずにその理由を説明していますが・・・。また、最初の市場調査も行わずに事業を展開し、案の定、赤字を出し続けるケースや、マルチ商法に引っかかり、多額の借金を抱え、その借金を返済するために、また、マルチ商法に手を出す事例など本書で指摘しているように事例に残念ながら遭遇しています。

以前、このコラムでもさまざまな意思決定法があることをご紹介致しましたが、起業とはその人にとっても大きなリスクを背負い込むわけですし、また、私たちは将来のことは誰一人正しく予想することはできません。そのような理由で、多くの失敗事例を研究することは、避けることのできる事態が分かるわけですから、損失を避けることができると同時に自信と信頼を得ることにもなります。

スポーツで例えると、ボクシングではガードが弱ければどんなにハードパンチャーであっても相手のカウンターパンチが怖くてパンチを出すことができませんし、柔道の受け身が十分でないと逆に相手の返し技に遭います。また、サッカーのディフェンス力がダメだと相手にボールを奪われた際のカウンター攻撃によってたちまちゴールネットを揺らされてしまう羽目になるでしょう。野球の投手陣がふがいないと、野手は長時間守備に従事しなければならず攻撃への集中力がそそがれてしまいます。

ここは、起業についての最悪の事態を想定して、その最悪の事態を最前の事態へと導く行為を選択するという「マキシミニ基準」(maximin rule)、あるいは、他の人の失敗事例を「他山の石」にしても良いのではないでしょうか。


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Posted by 宮平栄治 at 11:04│Comments(0)沖縄経済学
 
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