2005年09月28日

第72回「景気拡大時に政府がやるべき事」

8月8日、参議院で郵政民営化関連法案が否決され、衆議院が解散され9月11日の投票日が終わり日本は政治の季節から経済の季節へとかわりました。各党とも選挙公約を掲げていましたが、財政再建については、今ひとつ争点となりませんでした。

その日本の財政赤字ですが、財務省の発表によると平成17年の3月末現在、626兆3,633億円となっており、日本の人口1億2,764万人で割ると一人当たり約488万円になります。ただし、この額はあくまでも中央政府だけの赤字額ですので、都道府県、政令指定都市や市町村の地方政府の赤字額を含みません。また、政府が行っている公的事業による赤字も含んでおりません。

政府の定義は非常に複雑なのです。詳細は、井堀利宏著『日本の財政改革』(ちくま新書 1997年3月20日)p.18の図1を参照下さい。

さて、営業利益などの11の統計データからなる一致指数が3ヵ月連続して50%を上回った場合、景気が拡大と判断されますが、注目が選挙に集まる中、8月25日にこの拡大局面が43ヵ月連続し、戦後三番目タイの長さとなったことが報じられました。

また、9月27日に総務省が発表した2004年の工業統計速報では、1事業所あたりの製品出荷額、従業員1人あたりの付加価値学は過去最高を記録し、株式市場は日本の景気の先行きに明るい兆しがみられとして、株価や出来高なども高水準で推移しています。

生活にも景気拡大の実感があれば、おめでたい話なのですが・・・。

ところで、景気が拡大するということは企業利益の拡大や所得拡大を意味し、税収の拡大を意味します。つまり、絶好の財政赤字削減の機会が到来しているのです。

また、財政赤字は、政府が集める税金が政府が使用するお金を意味する歳出よりも少ないため借金することになったのですから、政府サービスの見直しも必要です。

その際考えなければいけない事柄が2点あります。

第1点は、政府は、家計や企業のように将来の所得を見通して現在の消費を抑制するのではなく、政府が将来提供するサービスの大きさを測って、政府の所得である税収を決定するのです。第2点は、憲法で国民は納税の義務がありますので、政府が税額を決定してしまうと拒否は出来ません。

したがって、国民側が政府へ「こんな政府サービスは要らないので税金を集める必要はありません」と主張しない限り、税金は安くなりませんし、政府サービスは拡大し続けることになります。

気を付けて頂きたいのは、政府サービスの見直しを主張できるのは、納税者ではなく、国民だかだという事です。

その理由は、先程も述べましたが、国民は納税義務者です。また、政府が政府サービスを提供しているのは納税者ではなく国民で、説明責任は国民に対して行われます。また、納税者イコール国民ではありません。たとえば、義務教育というサービスは小学生と中学生ですが、児童や生徒は納税者ではありません。

景気が拡大しているといわれている今こそ、政府サービスを見直す必要があります。また、政府サービスの見直しは、政府に代わって民間企業やNPOをそのサービスを提供することを意味します。ベンチャービジネスにとってもビジネス・チャンスの分野が拡大する可能性を示唆しています。必ずしもそう断言できない部分もありますが・・・。

景気拡大期に行わなければいけない内容については、他にも公定歩合の引き上げ等もあります。今日も、日本銀行の須田美矢子審議委員が、日銀から民間銀行へのお金の貸し出しを潤沢に尾子なっいた金融の量的緩和政策の見直し時期について触れていましたが、別の機会に私の考えを述べてみたいと思います。


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Posted by 宮平栄治 at 21:55│Comments(0)沖縄経済学
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