2005年10月03日

第73回「インターンシップ狂想曲第五番 伝えることの難しさ」

インターンシップは、学生を受け入れて下さる企業や行政機関との協力関係で成り立つわけですが、その際、重要なことは、受け入れ先と教育機関でどのような役割分担を行うかを明確にする必要があります。

残念ながら沖縄では、たとえば、教育実習のように大学間を横断するようなインターンシップの協議会などはありません。そのため、大学によっては、卒業論文を書く代わりにインターンシップの実施、あるいは、守秘義務等のように社会人として当然の法蓮遵守教育を行わないまま学生を実習先に丸投げしている所もあるようです。

それはそれとして。さて、受け入れ先と教育機関でインターンシップの教育内容をどのようにするか、あるいは、どのような補完関係が望ましいかという講演会へパネラーとして出席した時の事です。

私が、大学の座学では、チームワークの重要性を教えることは難しいことを説明しました。その理由として、たとえば、自動車はエンジンだけをパワーアップ、強度強化されても、タイヤ、ブレーキ、空力ボディー、路面という他の事柄も改善されなければ高速走行ができないと同じように、企業や行政機関の組織では、一人だけ営業成績が良くても組織全体の業績が落ち込んでしまうと、その個人成績は評価されない可能性があります。そのため、組織全体の業績向上を意識しなければいけません。ところが、座学では、個人が、勉強方法が正しく、一生懸命努力すれば良い成績につながるためなかなかチームワークというものを体感できにくいわけです。

また、チームプレイではチームの仲間との対話しながら、作業を進めていきます。そのため、挨拶、尊敬語や丁寧語などの話し方、あるいは、ビジネスマナーなどが基礎となりますが、座学のテストは論述式が多いため、黙々とペンを走らせればいいのですからビジネス基礎への意識は希薄になりがちです。

以上の理由から、インターンシップを実施し、どうすれば企業の一員として、あるいは、社会の一員として学生のみならず全体をよりよくするために何が必要で、成すべきかを学ばせて頂きたいと受け入れ先との連携、協力関係、あるいは補完関係を説明致しました。

講演会終了後、とある企業の社長さんがいらっしゃって私に、「結局、先生は学生に就職指導していないのですネ」とおっしゃるではありませんか。私は、「そんな事は一言も話していません。なぜ、そのようにおっしゃるのですか」とお聞きしたところ、「だって、大学の講義はチームプレイを教えられない、つまり、就職に不利になるような事ばかり教えているではないか」とご立腹のご様子。

私の舌足らずの説明をお詫びして、大学の講義には、座学、実験、インターンシップのような実習、野外での聞き取り、データ収集そして座学確認というフィールドワークがあり、私がチームプレイを教えるのが難しいといったのは座学形式で、この座学は論理的思考を養うことが中心となるためチームプレイを教えにくいのだということを説明しましたが、得心しては頂けませんでした。

あとで関係者からお伺いしたところ、その社長の会社には毎年、大学生を採用するようですが、1年未満で辞めてしまうケースが多いようで、大学教育に対して日頃から不満と疑問を抱いていたようです。そこに私があのような事を述べたものですから、「それ見たことか」となったのでしょう。

伝えることは、なかなか難しいということを改めて気づかされた一日でした。落語ブームになっているのも、笑いによるストレスに発散に加え、伝える術を学びたいという目的もあるのかもしれません。


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Posted by 宮平栄治 at 13:26│Comments(0)沖縄経済学
 
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