2006年01月29日

第109回 「公正か平等か、それとも・・」

1月28日(土)の朝刊の第一面は、ライブドア事件後の世論調査の結果が踊っていました。

ライブドア前社長・堀江貴文容疑者後に共同通信が行った緊急世論調査では、小泉内閣による市場原理導入や規制緩和など一連の構造改革への見直しが過半数を占め、また、小泉内閣への支持率も昨年11月から4.2ポイント下落し、52.9%という内容です。

また、「勝ち組」や「負け組」という経済格差についても75.0%が広がっていると一億総中流社会意識だったころと比べると隔世の感があります。

堀江容疑者を時代の寵児とはやし立てていた頃、昨年9月の衆議院総選挙の狂騒から考えると、ライブドア問題が政策と政治へ飛び火したのと、世論の移ろいやすさを感じます。

さて、議院選挙で、堀江容疑者を自由民主党の推薦候補として自民党幹部が応援したためライブドア問題と小泉改革を関連づけて考える傾向がありますが、市場原理導入や規制緩和は、効率性や技術革新を是とするパラダイムですので、問題の本質が異なります。

ライブドア問題では、株価を維持、あるいは、上げるためにおこなった様々な行為、たとえば、赤字の粉飾、風評の流布、インサイダー取引という手法が証券市場という企業会計透明性や情報開示によって投資家の財産を守り、市場取引の公正性を守るというルール違反だということが直接的な問題です。

間接的な問題としては、堀江容疑者をマスコミに露出させることによって、耳目を集める手法にマスコミも、また、一部投資家も乗ってしまったこと。そして、検証なしに、ライブドア問題と構造改革による経済的格差を結びつけてしまうことです。

小泉内閣の構造改革や行財政改革についてとやかく述べるつもりはありませんが、市場原理の導入は、効率性や技術革新によって、安価で、優れて財やサービスが生まれ、安価で、優れて財やサービスを生産した人や企業に所得で報いる公正な社会である反面、競争に勝った人と負けた人では、経済格差が拡大するという側面を持ちます。

経済格差が社会的認知を越えると、今度は平等化を求める世論が高まりますが、平等化は弱者の論理ですので、政治権力により富める人から所得を税金などで奪い、社会保障等によって社会的貧者に所得を再分配する社会システムです。

この平等化が行き過ぎると、政治腐敗の横行、非効率化や技術革新への意欲減退となり、経済は不活発となります。

ですから、公正と平等が補完しあった衡平な社会を築くかが重要です。たとえば、たとえ競争に敗れても再チャレンジする機会の創造、弱者救済ではなく弱者を強者にかえる社会構造、また、政治機構以外に経済的に豊かな人から社会的弱者へ所得が再分配するメカニズムの構築が必要です。

ライブドア問題と絡めて述べますと、堀江容疑者が、起訴された場合、どのような判決となるか分かりませんが、事業意欲があり、また、能力があるならば、偏見無く受け入れられるかどうかが、より成熟した社会の試金石の一つとなるでしょう。


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Posted by 宮平栄治 at 19:16│Comments(0)沖縄経済学
 
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