2006年03月25日

第124回 「マニフェスト選挙と日本的家族経営の利点」

今年、沖縄は選挙の年です。2月の名護市長選挙を皮切りに、4月の沖縄市長選挙、9月には自由民主党総裁選挙やアメリカ下院の中間選挙、そして11月の県知事選挙が予定されています。

そこで、今回はマニフェスト挙と日本的家族経営の利点の共通点についてのコメント致します。

2006年3月11日(土曜日)の「第11回FDフォーラム-これからの大学教育-」のシンポジウム「大学教育への期待」では、前三重県知事で早稲田大学大学院公共経営研究科教授の北川正恭氏がマニフェスト選挙(選挙公約)を実施した理由を述べておられた。

北川氏が三重県知事に立候補した際にマニフェスト(選挙公約)を作成した際の発想は、「事実(あるいは経験)を基にした三重県経営は止めよう」というものであったそうです。

その代わりに、自己責任あるあるべき姿、理念やビジョンを決める「理念型の三重県経営」へと政治のあり方を変えるということです。その背景は、3月20日(月曜日)に沖縄市商工会議所で行われました東京都三鷹市の関幸子さんの講演と共通しますので、まとめてコメント致します。

事実(あるいは経験)を基盤にした選挙および地域自治と価値(あるいは理念)を前提にしたそれとの相違をまとめると次の様になります。

はじめに、発想が「~とはこんなもんだ」という思いこみから「~とはこうあるべきだ」という未来志向へと変わります。

また、改革への態度は、事実や経験を土台とした場合は、「できない理由をさがす」態度から、価値や理想を地盤にした場合は、理想と現実を比較対照し、現実を理想へと近づける手法を採用するため、「出来る理由をさがす」というポジティブな態度へとガラッと変わります。

具体的な例としては、「県立病院は赤字でいいんだと」いう思いこみがあったそうですが、それを、4年間かけて徹底的に県立病院の4名の病院長と徹底的に話し合い、「県立病院の赤字は当たり前」という“事実前提”から「まず収支の健全化をやろう」という決定、つまり“価値前提”へ転換4年間かけて黒字化したそうです。

その結果、民間病院との棲み分けも可能となり、高額医療や難病治療は儲からないけど県立病院がやるという良循環となったそうです。

また、県立病院で「県民のために」あるいは「患者ファースト」を行っていると名実ともに思いこんでいたらしいのですが、院長先生が「患者ファースト」を真剣に考えられて「ハッ」と気がついたことがあったそうです。

それは、病院長回診となると、廊下の真ん中を病院長が歩き、病院長の後ろを何人もの若い医師がぞろぞろと歩くという状況で、こんなのは「病院長ファースト」病院経営だということです。

患者ファースト」なら患者さんが廊下の真ん中を歩くということを病院長自ら自発的に気がつかれ、その後は、患者さんの立場を考え、病院長回診では、病院長は廊下の端を歩くように病院長自ら決定。

病院長が、廊下の端を歩くまで実践して始めて、医師や、看護士や、病院事務職員、つまり県立病院の関係者全員が「患者ファースト」へ変わり、「本当に改革をやるんだ」という意識が病院内へ広がり、関係者も理念に向けて動き出すという良循環が生まれだしたそうです。

バブル崩壊後、日本的経営に関して懐疑的、あるいは無批判にアメリカ的経営手法を礼賛する風潮がある中で、キャノン会長の御手洗富士夫氏は日本的家族経営の利点を主張し続けていましたが、マニフェスト選挙と相通じる点があります。

それは、時間はかかりますが、トップに立つ人、改革のリーダーあるいは関係者が、ステークホルダーに対して、誠意をもって説得・説明し、改善、改革や目標を具体的にイメージさせ、巻き込み、個々の能力やエネルギーを改善、改革や目標へとベクトル一致できた時、大きな良循環へと変わるということです。

「~とはこんなもんだ」と思いこみ、愚痴る前に、明るい未来と現在の活動の架け橋であるビジョンを策定し、「~とはこうあるべきだ」という視点からできる理由を探るとお酒も美味しく呑めるかもしれません。


同じカテゴリー(沖縄経済学)の記事
仙台で考えたこと
仙台で考えたこと(2012-09-09 20:16)

マニュアル人間
マニュアル人間(2012-07-16 06:05)

地酒購入断念
地酒購入断念(2011-12-11 18:27)


Posted by 宮平栄治 at 10:43│Comments(0)沖縄経済学
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。