2006年04月02日

第126回 「2006年問題」

4月になりました。各機関では新年度を迎え、何かと慌ただしい毎日です。大学も、進級、留年、卒業延期など事務処理を終え、新入生を迎える体制づくりとなります。

さて、本コラムでは「2007年問題」を何度か取り上げました。いうまでもなく、団塊世代が大量退職するのが来年に迫っています。

大学において、今年度は一足先に「2006年問題」を迎える年となりました。「2006年問題」とは・・・

すなわち、「ゆとり教育」という名で改訂された新教育課程要領の学生が入学するのがこの年です。ゆとり教育とは、2002年4月から導入された新学習指導要領に基づいた教科書に基づいた教育内容で、具体的には

週休5日制の導入による授業時間の一割減少。
学習内容の三割減少。たとえば
円周率を3.14から3と教える。
中学校での英語では必須単語が500語から100語
総合学習の導入

などです。

ゆとり教育が導入された背景については省略しますが、多くの大学では、「基礎学力不足の学生が入学する年」と位置付け、さまざまな対策を講じているわけです。

たとえば、予備校の講師を招聘し、微積分、微分方程式や英文法の補講を行ったりするある大学が話題となりました。

大学生の学力低下が問題にされてきたのは今に始まったことではありません。ちょうど、「今の若い者は・・・」と類似しているように思います。

大学生の学力低下と授業時間数の減少には相関関係があると考えられますが、因果関係とまでは断言できない可能性があります。つまり、「授業時間数を増やせば、学力は向上するのか」ということです。

「ゆとり教育」の問題や課題はあるにせよ、その教育制度下での学生が入学してくるわけですから、教育者として教育を施さなければいけないということは、直視しなければならない事実です。

教育を行うとき、何時も心がけている事があります。それは、William Arther WardとClay P. Bedfordの言葉です。

William Arther Wardは、

The mediocre teacher tells. The good teacher explains. The super teacher demonstrates. The great teacher inspires.
訳:凡庸な教師は教える。良い教師は説明する。優秀な教師は例を示す。偉大な教師はインスピレーションを与える。

Clay P. Bedfordは、

You can teach a student a lesson for a day; but if you can teach him to by creating curiosity, he will continue the learning process as long as he lives.
訳:学生に日に一つ教えを授けることはできる。だが好奇心を駆り立てることによって学ぶことを教えられたら、学生は一生学び続けるだろう。

と述べています。

新年度にあたり、初心に戻り、学生へ“インスピレーション”や“好奇心”を伝えたいと考えています。


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Posted by 宮平栄治 at 16:00│Comments(3)沖縄経済学
この記事へのコメント
 ご無沙汰しております。

 WardさんとBedfordさんの言葉、
今月から大学講師になる私にとって、
身の引き締まる言葉です。

 これまでの学生の立場なら、
「あの先生は、説明は素晴らしかったけどインスピレーションは…」
と振り返るだけで済みました。

 今後は先生として、学生の立場を忘れず、
学生だけでは得られないものを
学生に与えたいと思っています。
以上
Posted by 旧汀志良次町出身 at 2006年04月02日 17:34
宮平です。

 そうそう、私が大学へ赴任する際、恩師から「最初に教壇に立った緊張感を忘れないように」ともいわれました。

 講義は、学生との協力関係で構築されますので、講義する側が楽しくなければ、あるいは、知的興奮がないとなかなか成立しません。

 ちょうど、寄席の噺家と聴衆のやりとりと共通する点もあります。

 群馬での益々のご活躍を祈念します。
Posted by 宮平栄治 at 2006年04月03日 09:41
 講義と寄席の共通点,納得しました.

 たまに,新宿末廣亭の寄席に行くと,
枕で聴衆の心をつかむ噺家さんや,
居眠りしている聴衆に
わざと大きな声を出して起こす噺家さんもいて,
そのやりとりは,どこか講義と似ています.

 私も緊張感を持ちつつ,4月12日の初講義を楽しむために,
学生が木戸銭を払っていると仮定して,稽古に励みます.
以上
Posted by 旧汀志良次町出身 at 2006年04月05日 11:54
 
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