2006年07月18日

第146回 「自然保護と開発の両立の可能性」

前回に引き続き、学習院大学教授・川嶋辰彦先生のご講演から自然保護と開発の両立の可能性を探ります。

経済開発を行う際、「開発か、自然保護か」という二者択一論的な論争となりがちです。この二元論を一元論で考える方法として、ドナルド・コースの定理があります。

コースの定理については、別の機会にご紹介するとして、今回は、オランダの開発政策について・・・

さて、オランダという国家は、干拓によって国土を広げていったことは皆さんもご承知の通りです。

干拓の際、たとえば、高速度路を開通させるためにある貴重な干潟を埋め立てなければならなくなったとします。

日本では自然破壊か、自然保護かということで喧々囂々の議論になりがちですが、川嶋教授によればオランダは別の次元で開発論議が行われるとか。

その前提となるのが、「自然の再生可能性」です。

今年5月14日の第133回の「“ミティゲーション”という言葉」でご紹介しましたが、あの理論を使います。

具体的には、再生可能という前提にして、「貴重な干潟を他に再生する費用はいくら、高速道路をつくる費用はいくら、あわせこれくらいの金額となるけれども、着工するべきかどうか考えましょう」という塩梅だとか。

似たような事例では、オーストラリアのシドニーの繁華街、キングスクロスの公衆トイレに入った際、なんと目の前に新品の注射器と使用済み注射針回収ボックスが保健所より用意されているではありませんか。

注意書きがあり、読むと、「麻薬を使うのは中毒だからしょうがないけど、注射器に使い回しよって、エイズなどの感染症をこれ以上広げないようご協力お願いします」という説明とお願い。

余裕があるというか、合理的というか、社会的コストを広範囲に捉えていています。

オランダの事例の場合、「再生可能な自然」という前提条件が消え失せ、資金に余裕がなくなると、自然保護と開発は二律背反に陥ってしまいますが、わが国では何時になれば、成熟した議論が繰り広げられるようになるのか、と考えさせられた内容でした。

やはり、議論を繰り返し、経験を積まなければ難しいのでしょうか?


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Posted by 宮平栄治 at 22:50│Comments(0)沖縄経済学
 
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