2006年08月03日

第151回 「帰農増を読み解く」

少し前、7月月28日(金)の日経新聞のホームページに「兵庫県、定年帰農が大幅増・従事者5年で1万1799人増」という見出しの記事がありました。詳しくは次のホームページをご参照下さい。

http://www.nikkei.co.jp/news/retto/20060727c6b2701v27.html

さて、この内容を経済学的に読み解くと・・・

現象面では、第一に、団塊世代で元気のある人が農業に従事したこと。第二に、少子化で都市周辺部では土地にゆとりが出始めたこと、を指摘できるでしょう。

では、理論面ではどうかというと、川嶋先生のコラムで述べました「空間経済学」では、フォン・チェーネンが輸送手段や冷凍施設等がない時代の都市形成について理論化しています。

チェーネンは、農産物供給地として、都市の外縁部に都市住民へ新鮮な牛乳を供給するために酪農地。酪農地の外縁部に、都市住民へ牛乳と同じように新鮮な野菜を供給するための畑地。畑地の外縁部には、鮮度を問わない穀物や牧草地が立地すると述べています。

さしずめ、今回の記事は、現代版チェーネン理論とも言えるでしょうが、チェーネンの時代と比べて、輸送手段も冷凍保存技術も確立しているのに、なぜ、都市部で定年帰農が大幅に増えているのかという疑問が。

一つ考えられるのは、都市部近郊で作られるため、都市の豊かな層の人々が、安全・安心な生鮮野菜であることを確認しやすいからではないかと推論できます。

都市リッチ層は、健康を意識する傾向があり、安全・安心な生鮮野菜に対しては、少々高くても購入します。比較的高価格であるため、都市周辺部であっても十分農業で生活ができるほどの所得が得られ、定年帰農が増えているのかもしれません。

同じ現象が、那覇市の周辺部で起こる可能性も十分考えられます。今後の動向に注目しましょう。


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Posted by 宮平栄治 at 19:01│Comments(2)沖縄経済学
この記事へのコメント
 今回のブログを読んで,
実家のこと,経済学に惹かれたことを思い出しました.

 私の実家近辺は
首里のティシラジマチグヮーといって,
15年位前までは,
近郊から農作物や魚を売りに来てくれるオバァ達が
小さな朝市をつくっていました.

 その頃の私は,
「安全・安心な生鮮野菜」という視点は皆無でしたが,
「何でわざわざ西原や(15年以上前は)糸満からここまで売りに来るの?」
と感じていました.

 その頃は,現象を自分が納得する手段として
経済学に興味を持ったのですが,
宮平さんのブログを拝見していると,
今後は,経済学で少しでも世間のお役に立てればと思いました.
以上
Posted by 伊佐 at 2006年08月04日 10:42
サステーナブル・シティという考えがヨーロッパから導入されていますが、根底にはハワードの田園都市構想があるように思われます。

私はこの分野はまだ不勉強なので、今後、住んで、暮らして、癒され、憩える地域、あるいは、職・遊・楽・住・学などの機能面からの地域を、地域経済学や空間経済学などから学ぶ予定です。
Posted by 宮平栄治 at 2006年08月07日 12:48
 
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