2008年01月27日

第282回 こんなはずじゃ~なかった-タクシー運賃値上げ

 1月26日(土曜日)は、本学の卒業論文最終報告会があったため、レジュメの作成や校正やらで慌ただしい一週間だったため久しぶりのコラムです。

 さて、2007年12月3日に東京地区(23区と武蔵野市、三鷹市)のタクシー会社は運賃を引き上げましたが、その結果は・・・

 1月17日(木曜日)の日本経済新聞によると値上げから約1カ月間の1日1台あたり営業収入は前年同期比2.8%減ったそうです。

 今回の運賃値上げの目的が「収益増による乗務員の賃金引き上げ」でしたが、今までのところ結果は、期待と違ったようです。このままでは当初の目的だった乗務員の賃金引き上げどころか引き下げになりかねません。

 詳細は日本経済新聞の「タクシー営業収入2.8%減、東京地区値上げ1カ月」という見出しの次のホームページをご参照下さい。

 「http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080117AT1D160AJ16012008.html

今回の事例を経済学の価格と需要の関係、「需要の価格弾力性」という言葉で説明します。

 価格を引き下げれば多くの商品やサービスの売上げ(=需要)が拡大すると考えられます。 「需要の価格弾力性」では、価格を1%と引き下げると需要が何パーセント拡大するかで価格引き下げをすべきかどうかを判断します。

  需要の価格弾力性=-1×需要の変化率/価格をの1%の変化率

となります。

 例えば、販売促進など他の条件が同じと仮定して、価格を1%と引き下げたとき、需要が1%以上の拡大が見込めるならば価格引き下げによる需要の拡大は、収入拡大につながると期待できます。このような商品やサービスのことを“弾力的”であるといいます。

 逆に、価格を1%と引き下げたとき、需要拡大が1%以下ならば、価格引き下げによる収入拡大効果は小さく、引き下げ策は賢明な経営戦略とはいえません。このように価格を1%と引き下げた際、需要拡大が1%以下の商品やサービスのことを“非弾力的”であるといいます。

 具体的な商品では、お米などがあります。例えば、お米の価格が、現在の半値になったからといって食べる量が2倍になることはありません。

 ただし、商品やサービスには個人差がありますので、ある人にとっては弾力的であっての他の人には非弾力的な場合もあります。また、販売促進などの影響の受けますので、この概念を利用する場合はご注意下さい。

 今回の東京地区のタクシー会社の事例では、価格引き上げですので、売上げが減るわけですが、減り方の割合が価格上昇の割合を上回ったことになります。

 理由として考えられることは、タクシーから鉄道やバスなど代替手段への乗り換えが考えられます。

 「こんなはずじゃ~なかった」というタクシー関係者の悲鳴が聞こえて来そうです。


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Posted by 宮平栄治 at 20:15│Comments(0)沖縄経済学
 
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