2004年11月26日

第16回:泡盛PRの偏差値は?

 11月11日(木)、名護市民会館中ホールで開催されました北部泡盛同好会へ出席しました。会場一杯の人手で、私もついつい飲み過ぎ、翌日、朝寝坊をしてしまい、原稿の締切りに間に合うかどうかで頭を痛めていました。

 さて、私が痛飲した遠因の一つは前日の朝日新聞の記事です。記事内容は、東京大学では学内研究を活用した商品に商標登録を発売することをきめたそうです。その内今回の目玉商品の一つが、故・坂口謹一郎東大名誉教授が沖縄戦で失われる前に採取し、東大で保存されていた黒麹菌を原料にした泡盛「御酒(うさき)」だそうです。価格は4,200円と、沖縄の店頭で販売されている泡盛一升の約4倍の価格です。

 いわば、泡盛は大学入試の偏差値が最も高い東大も認めた商品価値で、泡盛のブランドイメージも高まったものと思われます。

 また、酔い覚めの良さと健康志向のお陰で、種類の消費量はここ2~3年は横ばい状態なのですが、泡盛を含め焼酎類の売上は拡大しており、焼酎のイメージは、『山谷ブルース』の中の歌詞や私が学生の頃の「安い」、「強い」、「くさい」、「ダサイ」というものを完全に払拭したといえるでしょう。

 11月1日の泡盛の日には、泡盛マイスター協会による泡盛マイスターやアドバイザー制の導入などのイメージアップに官民挙げての努力も貢献しているでしょう。かつての泡盛業界は、航空大手が企画した首都圏のエグゼクティブ向けの泡盛蔵本試飲ツアーが大盛況で、継続を希望したにも関わらず、時の泡盛酒造組合会長御自ら、「(直接会社が)儲からないからこの企画はもうお断り」という姿勢からすると隔世の感があります。

 さぞかし、泡盛業界は順風満帆かと思いきや、懸念材料もあります。例えば、復帰特別措置による酒税の35%の軽減が、3年後の2007年5月14日には効力を失いますが、その後の措置がどうなるかも分かりません。また、利益のある分野には新規参入があるのが世の常です。焼酎・泡盛業界も聖域ではなく、徳島県の酒造メーカーが、徳島の特産品を原料に使い、九州産など他の焼酎と差異化した焼酎の販売に乗り出しりしています。

 国内ばかりではありません。日本経済新聞によれば、アメリカでは、中国から安くて質の悪い焼酎が流入していることから、鹿児島県と熊本県の焼酎メーカー組合が、焼酎に対する悪評が定着させまいと、ニューヨークで試飲会を開催したそうです。残念ながらこの記事には沖縄県の泡盛酒造組合の文字は見あたりませんでした。

 販売促進に関連する広告としては、11月1日の日本経済新聞社の広告特集、「九州沖縄の本格焼酎・本場泡盛」の第一面では久米島の久米仙酒造が五段抜き横一面の広告を、最終面ではヘリオス酒造が五段抜きで横半部の広告を掲載していました。また、県内泡盛酒造メーカーのCMも多量に流れています。しかしながら、県外出張の折、機中の沖縄観光案内のビデオで泡盛メーカーのCMを見かけますが、テレビでは見た覚えがありません。沖縄県内では、鹿児島の某大手芋焼酎メーカーのテレビCMが、「これはどう見ても鹿児島の海ではないだろう」と思われるシーンを背景に流されています。これでは狭い県内の市場のパイを沖縄県内の泡盛業界で奪い合っているにすぎません。

 11月21日付けの朝日新聞ホームページの「焼酎「芋派」4年で3倍増える女性から熱い支持」によれば、福岡市に本社をおく「ヤマエ久野」のサイト「焼酎紀行」でおこなった焼酎プレゼントに応募した約13万人のアンケートから米・芋・麦焼酎の3種に絞って好みの焼酎を集計したところ、芋焼酎派の割合が 2000年の9.4%から2004年には33.1%へ拡大し、中でも女性の支持率が1割から3割に急拡大しているそうです。一方で、米焼酎の割合は 2000年には48.7%だったのが、2004年には27.5%へと減少したそうです。

 商品力は、品質と価格に加え、感動と情報発信も重要です。朝日新聞の記事にもあるように、全国的に焼酎の良さが発見され、新たなファン層が拡大していますので、小さな秘蔵の泡盛もあっていいでしょうが、追い風に乗ってそろそろ全国展開できる泡盛メーカーも必要でしょう。

 では、その仕掛けを考えてみましょう。再び、私の学生時代の話で申しわけございませんが、当時の仲間は、私が泡盛の良さを強調し、飲むように薦めても頑なに泡盛を拒み、スコッチ・ウィスキーやバーボンを飲んでいました。アメリカ映画やテレビドラマに強く影響されていた様な気がします。そこで、販売促進のためには、例えば、ヨン様のようなスターが出演する映画やテレビドラマで、泡盛を格好よく飲むシーンを提供する戦略も必要かもしれません。ただ、この戦略は未成年に飲酒を促すことにもなり、慎重に考えなければなりませんが・・・。

 東大も認定した泡盛の魅力、しかし、他の焼酎業界やメーカーと比較して泡盛のプロモーション偏差値が高いとは思えません。


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Posted by 宮平栄治 at 00:00│Comments(0)沖縄経済学
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焼酎紀行
麹菌の違い【芋焼酎のすべて】at 2006年12月27日 14:00
 
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