2005年06月24日

第44回「トラブル情報の提出の意義を考える」

企業や行政機関による不祥事が相次いでいます。そのためか、本社の法務や顧客担当部署から支店や支所のような現場には、顧客とのトラブル情報提出を求める例が多くなっているようです。

不祥事に対して敏感になり、顧客や国民の側からすると望ましいような展開を思われますが、中には首をかしげたくなるような指示もあります。

ある企業の支店では、「顧客とのトラブルがない」と報告したところ、本社の担当部署より「そんなはずはないだろう」、「隠蔽していないか」・・・との問い合わせがあったそうです。これでは、生徒と先生の古典的なギャグ、生徒:「私は何も悪いことをやっていません」、先生:「先生は君を信じているし、味方だ。だから、正直に話してごらん」、生徒:「だから、正直に話しているじゃないですか、何も悪いことをやっていないと。」、先生:「先生は君を疑っていない。だから、先生を信じて正直に話してごらん」に通じ、本社と支店との間に不信感をもたらし、やる気を削ぐことになります。

なぜ、その支店でお客様との問題がなかったことを喜ばないのでしょうか。本来ならば表彰されて然るべきです。

この場合、隠蔽がなかったと仮定した場合、支店や支所がどのような事柄が不祥事や顧客とのトラブルなのかを理解していない、あるいは、法務や顧客担当部署が、どのような事例がトラブルや法令違反になるのかを例示していない可能性があります。

お客様と直接対応する現場まで、内容が行き渡り理解されるには、時間、努力と工夫を要します。私のゼミの出身者が、ある大型小売店の課長となり、部下が正社員、パートさんやアルバイトを含め、総勢100名いるそうですが、ある考え方を浸透させるために一週間かかったそうです。さらに、さまざまな顧客ニーズに対応している現場では、トラブル情報にまで行き届かない可能性がありますから、一回の通達だけではなく、繰り返し、説明する必要があるでしょう。

もし、トラブルや不祥事があった事実を隠していたならば、トラブルや不祥事の責任がその現場のみに押しつけられ、それを恐れた可能性があります。

この事態を回避するためには、トラブルや不祥事の責任の一端は、現場を指揮・監督する現場責任者にもありますが、トラブル情報の提出の意義と隠蔽による実害を理解させなければ、隠蔽はなかなか防げません。

トラブル情報の提出の意義は、情報の共有化がおこなわれることで、同じようなミスを防げるということです。その際、報告があった上部機構では情報の整理、そして、現場へのフィードバックが分かり易く、迅速におこなわれる必要があります。

トラブル隠しの決定的な問題は、最初、小さなトラブルを隠していたことが、トラブル隠しを繰り返しているうちに、感覚が麻痺し、次第に、大きなトラブルや法令違反までも隠すようになり、企業全体のイメージやブランドを損ね、最悪の場合は、倒産に追い込まれることです。

これらを理解しないまま、「これは良いことだから」、「法律で求められているから」、「経営者からの指示だから」というような無邪気な発想で、現場へ通達・指示・指令・命令を行うと、お客様に、製品や商品、あるいは、サービスを提供する現場では無用の混乱が起きるます。


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Posted by 宮平栄治 at 08:38│Comments(0)沖縄経済学
 
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