2005年07月15日

第47回「他人は頑固者、時代遅れと言ったけれど」

昨年の丁度今頃の本コーナーで、商業高校の生徒さんたちを研究発表会の模様を紹介した際、北部工業高校の生徒さんたちが沖縄の在来種豚のアグーとアメリカ原産のデュロックをかけ合わせたチャーグーを取り上げました。さて、今月号の「うるま」誌では、アグーの特集号を編成しています。

この貴重なアグーを守った人が、初代の名護博物館館長の島袋正敏(しまぶくろまさとし)さんです(私たちの間では"せいびん"さん、とお呼びしています)。その"せいびん"さんからお伺いしたアグー復活の秘話について今回のコラムといたします。

"せいびん"さんが、名護博物館の館長として就任した1983年当時、さすがに方言札(ふだ)はありませんでしたが、泡盛への再評価が始まったばかりで、まだまだシマー小(グワー)は、"劣るモノ"、"格好悪いモノ"、"生産性が悪いモノ"として次々とその数を減らし始めていました。この状況に危機を感じた島袋正敏さんは、アグーをはじめ、沖縄の在来種保全に東奔西走したそうです。

アグーに関して調査した所、当時、確認できた数は30頭ほど。急遽、名護博物館で18頭収集したそうですが、「ここは博物館なの、動物園なの」と当時の名護市長から皮肉を込めた発言や「こんな時代遅れのモノを集めてどうするのか」という声もあったそうですが、黙々と在来種保護に尽力されたそうです。当時の"せいびん"さんは、頑固者とて周囲からは映らなかったのでしょう。もちろん、ご本人は確固として信念があったのですが。その後、名護博物館の移転に伴い、収集した動物も移動させなければいけなくなり、その際、北部農林高等学校の太田先生が助け船を出し、戻し交配によって現在に至ったわけです(詳細は、「うるま」誌に記載されていますので、そちらをお読み下さい)。

「雑草とは、人類が未だその有用性を見いだしていない植物である」と定義されるように私たちの沖縄にはまだまだ「私を捜して」、あるいは、「こんな利用の仕方もあるよ」と声なき声を出している動植物がたくさんあるようです。この件につきましては、第4回沖縄経済学会連続シンポジウムでのパネリスト、沖縄環境経済研究所社長の上原達夫さんの情報から、機会を見つけてご報告する予定です。

効率化や経済性が重視されている一方で、一通り必要な物質が手に入った"成熟化社会"においては、低価格、定規格、定量化、同一品質というインダストリーの世界と、癒し、感性、感動といったアートとハートの世界が混在しています。ということは、シマー小(グワー)再評価の可能性が高く、まだまだ、沖縄の今後の発展性が努力次第では展開できることを示唆しています。


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Posted by 宮平栄治 at 13:44│Comments(0)沖縄経済学
 
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