2005年09月07日

第57回「景気の”踊り場脱却宣言”をしたけれども」

私たちの暮らし向きの善し悪しを、「景気が良くなった」とか、「悪くなったとか」といいますね。この場合の景気とは、給料が上がった、下がったとか、あるいは、残業が増えた、減ったとかで解釈されることが多いようですが・・・。

さて、経済学では、景気が上向きになったり、下向きになったりすることを景気変動といいます。その景気変動ですが、景気の状態を表す経済数値が小刻みに上下することを“踊り場”といい、まだまだ将来的には楽観視できず、不安定な状況にあることを表現します。

景気を表現する手法として景気動向指数というのがあります。私たちの体に例えると、景気を体温とすれば、指数とは体温計で測定できる体の温度のような在庫や求人倍率などです。

また、景気動向指数にも景気との時間的対応関係で先行指数、一致指数、そして遅行指数があります。

先行指数とは、景気の浮き・沈みよりも先に動き、景気の山に対して約5ヶ月早く、そして景気の谷に対して約2ヶ月早く動くで、在庫などから成る11の指数です。一致指数とは、景気の変動と同じタイミングで動く生産指数などから構成される11の指数です。遅行指数とは、景気の山で約半年、景気の底からは約1年遅れて動く常用雇用指数などの8つの指数があります。

景気という場合、一致指数をいい、1.生産指数(鉱工業)、2.原材料消費指数(製造業)、3. 大口電力使用量、4.稼働率指数(製造業)、5.所定外労働時間指数(製造業) 、6.投資財出荷指数(除輸送機械)、7. 百貨店販売額 、8.商業販売額指数(卸売業)、9.営業利益(全産業)、10.中小企業売上高(製造業) および、11.有効求人倍率(除学卒) で景気の動きを見ているわけです。 

さて、その景気に対する評価ですが、8月22日には、景気拡大43カ月続き、「岩戸景気」抜いて戦後3位タイの上昇局面であるとか、郵政関連法案が参議院で否決され、衆院解散された翌日の8月9日には「景気は踊り場を脱却した」と華々しく宣言しました。

ところが、内閣府が9月7日に発表した7月の景気動向指数速報は、景気の現状を示す一致指数が6月の100%から7月は22.2%と大幅に悪化しています。

さてさて、私たちはいずれの数値や発表を信用して良いのでしょうか? 速報値ですから修正も大いに考えられますが、もし、来月も一致指数が悪化しているようだと「踊り場宣言を脱却宣言」は時期尚早だったと批判されるばかりか、選挙対策だったのではとの声も出てくるでしょう。

市場は、政府が発表する景気指標や政府の景気判断で敏感に変動します。選挙がらみで文言をいじったとなると市場への背信行為と言わざるを得ません。


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Posted by 宮平栄治 at 21:50│Comments(0)沖縄経済学
 
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