2005年12月30日

第99回 「理屈っぽいコラムです―因果関係―」

今日は晦日、明日は大晦日ですネ。

さて、前回は、シングル・ループ学習とダブル・ループ学習について説明しました。様々な経験を次の成功へとつなげるためにはダブル・ループ学習が有利ですが、それだけは教訓とならないという点を指摘しました。スキーマの修正も必要だいうことを述べました。

今回は、スキーマの修正方法について私見を述べたいと思います。必要な修正道具は、①因果関係、②論理学の知識です。

今回は、年明けのベンチャー・スタジオで放送予定の前・法政大学総長の清成忠男先生のインタビュー内容とも関連しますので、因果関係について説明します。

因果関係には、次の3つの条件が求められます。

第一の条件は、Aという現象とBという現象が存在することです。

第二の条件は、Aの現象が変化するとBの現象も変化するということです。

そして、第三の条件は、Aの現象に変化がなければ、Bという現象も変化しないという事です。

以上の3条件が満たされたとき、現象Aと現象Bには因果関係があるといわれ、現象Aを原因(先決変数)、現象Bを結果(従属変数)といいます。これを数学で表すと、直線の方程式となります。

                y=a×x+b

ここで、xは原因、yは結果で、傾きaと切片bは助変数(パラメータ)といいます。

さて、この因果関係を使って、風邪を引くという事例を考えてみましょう。この場合、原因は、風邪ウィルスに感染したためです。結果は、風邪の諸症状となります。

私は、冬場の講義では、講義室のあちらこちらで“ゴホン”や“ハクション”の騒音の渦と化します。学生が咳をするたびに私は風邪の菌を吸いこんでいるわけです。しかし、発症しません。理由は、風邪の菌を吸いこんでも抵抗力があるため発症しないわけです。しかし、夜更かし、忘年会が続き、連日連夜の午前様の結果、疲労などが重なると抵抗力が低下し、たちまち風邪を引いてしまいます。この抵抗力を弱め、風邪の発症を加速させる夜更かし、疲労などは“要因”と呼んでいます。

社会現象では、原因と要因が複雑に絡み合っていますので、直線の方程式のように単純化できません。ですから、様々な統計資料やアンケート資料などを統計学、計量経済学、多変量解析の手法によってコンピュータ解析した説明するわけですが、資料を読み込む場合には経験もやはり必要です。

あるレストラン経営者があるデータを見ていました。手元のデータには、銀行が多い地域にはレストランが多いということが判明しました。このことから、次の出店地域は、銀行の多い地域へ出店を決断するという話です。

この判断の誤りは、銀行数もレストラン数も同じ原因による結果だということを見誤った点です。銀行数とレストラン数の共通の原因は、その地域へ訪れる人々の数なのです。

組織においては、経営者の経験に加えて、社員間の情報の蓄積と共有化、自由闊達な意見の交換も求められます。

今回は、朝野皙・中村二朗著『計量経済学』(有斐閣 2000年1月)、朝野熙彦著『入門多変量解析の実際―第2版―』(講談社 2000年10月)、本多正久・島田一明共著『経営のための多変量解析法』(産能大学出版部 昭和52年10月)を参考にしました。


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Posted by 宮平栄治 at 17:56│Comments(1)沖縄経済学
この記事へのコメント
因果関係・・・・
毎日、隠れた因果関係を見つけようとデータをいじくりつつ、
擬似相関という言葉に恐れを抱く毎日です。

「データ、結果」を解釈するには、客観だけではなく主観(主体的な解釈)が
大いに必要なのでは・・・と最近、思っています。

上の例で言うと、銀行数もレストラン数も同じ原因による結果(その地域へ
訪れる人々の数)と考えることもできますが、「人の流れ→銀行の使用→
レストラン等へのお金の落とし易さ」というループができていると主観的に
解釈すると、銀行の数とレストランの数は相関があるのかもしれません。
重箱の隅をつつくようなコメントすいません。
Posted by Tstsshihica at 2006年01月12日 00:53
 
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