2006年01月26日

第107回 「経済成長率予測の目的は」

自民党の財政改革研究会(会長・中川秀直政調会長)の下でデフレ克服・成長プロジェクトチームの初会合が1月25日に行われました。

4月中旬をめどに、名目成長率や物価上昇率、長期金利などの数値目標を盛り込んだ提言をまとめ、今後のマクロ経済運営、特に、行財政改革へ反映させることが目的だそうですが、そればかりではなさそうです。

今回の会議は、財務省主導の政府見通しに対抗するため、増税の前に支出削減や消費税率引き上げを極力避け、経済成長を優先する竹中大臣が、政府の見通しに対して低すぎるのではないかと述べたことに、中川秀直政調会長や武部勤幹事長らが同調したとも見られています。

中川政調会長や武部幹事長のねらいは、官僚主導から党主導へと主導権を握ることで行財政改革を推し進めると同時に、族議員の勢力を削ぐことかもしれませんが・・・。

経済成長率予測が争点となる理由として、今後の経済成長率の見通し次第で、歳出・歳入一体改革における債務残高の対GDP比が変化します。また、6月に中期的な政策運営指針である「骨太の方針」における消費税率を含めた税制改革の中身は大きく変わります。

そのため、財政再建を優先する谷垣禎一財務相や与謝野馨経済財政担当相らと、歳出削減を優先する竹中平蔵総務相や中川秀直政調会長らとの成長率見通しを巡る綱引きは、9月の自民党総裁選挙の前哨戦となりそうです。

さて、経済の話へ戻りましょう。経済成長率を推計し、今後の行財政の方向性を決定するのはかまいませんが、経済は生きています。理論通りに動くことはありません。

谷垣-与謝野ラインも竹中-中川ラインの双方とも、9月の自民党総裁選挙をにらんで、駆け引きが加熱し、「この数値が望ましい」から「この数値にならないとおかしい」や「この数値になるべきだ」と変わることがないよう注視しなければいけません。

経済成長率の“観測”から“願望の実現”へと変わってしまうと、自らの数値の正しさを証明するために、政策を安易に変えかねません。そうなると手段と目的が入れ替わってしまいます。また、政府支出まで調整してしまうと悪のりを通り越して、どこかのIT会社と同じで経済成長率の粉飾と言われかねません。


同じカテゴリー(沖縄経済学)の記事
仙台で考えたこと
仙台で考えたこと(2012-09-09 20:16)

マニュアル人間
マニュアル人間(2012-07-16 06:05)

地酒購入断念
地酒購入断念(2011-12-11 18:27)


Posted by 宮平栄治 at 15:55│Comments(0)沖縄経済学
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。