2006年03月27日

第125回 「モデル無き時代の地域経営のあり方」

3月20日(月曜日)に沖縄市商工会議所で開催されました「まちづくりフォーラム」へ参加させて頂きました。

はじめに、三鷹市役所職員で、株式会社まちづくり三鷹シニアマネージャーでもある関幸子さんの「大変革期の地域経営とTMOの役割―市民・企業・大学・自治体による協働のまちづくり―」を拝聴させて頂きました。

その講演では、はじめに三鷹市がおかれている状況を強み、弱み、チャンス、危機の観点から分析されていました。

弱みの部分では、企業がなく、税収のほとんどが市民税で、しかも、周囲には武蔵野市や吉祥寺という強力なブランド力を持つ商店街にあること、また、都心に近く、9割が住宅地ということで企業誘致が難しいことを、危機の部分では、今後高齢化に伴い税収確保に迫られることを指摘されていました。

強みの部分としては、昭和49年から市民が市政に参画した実績があり、そのための徹底した情報公開と公募型の市民会議の実施、また市民会議と市役所が対等な立場のパートナーシップで協力し合う信頼関係にあること、さらには、大企業の執行役員が暮らし、また、大学も存在している点、チャンスとしては情報化時代の到来であると述べられていました。

さて、前回のコラムで述べた三重県と今回の東京都三鷹市の事例で共通することは、地域がおかれている現状を情報公開や説得で説明することと現在と明るい未来への着実な建設へ向けてエネルギーを集約するビジョン創造、そして、ビジョンを実現するために合理的な方法を県民や市民と共に考えるという演繹(えんえき)的推論にあります。

変革期になると経験に基づいて発想する方法もありますが、三重県や三鷹市が敢えて、経験主義的な手法をとらず、演繹的発想によって地域経営を行うにはそれなりの理由があります。

それは、わが国は、近代国家が経験したことがない高齢社会を短期間に迎えるということです。

世界保険機構の定義によれば、全人口に占める65歳以上の人口の割合が7%以上で高齢化社会、14%以上で高齢社会といいますが、わが国は、2000年の時点で17.2%ですからすでに高齢社会となっています。

高齢化社会から高齢社会へと到達した年数で比較すると、フランスが114年、スウェーデンが82年、アメリカが69年、イギリスが46年、ドイツが42年であるのに対して日本は21年で高齢社会に至っています。

さらに、ここしばらくは、諸外国に比べて高齢者の割合が高い状態が続きます。

つまり、これだけ短期間に、しかも、世界のどの国よりも高齢者の多い国になっているのですから、これまでわが国がお得とした、先進国の事例をお手本に、つまり、先進国の経験を基にした国のあり方や地域のあり方が困難になっているのです。

したがって、現状をしっかりと分析し、これからのよりよい時代を予想し、そのギャップを埋めていくという三重県が行ったマニフェスト選挙が必要であるし、あらゆる知恵を総動員し、改革するために情報公開、市民と行政の協働、関係者の参画という三鷹市の手法となったのです。

私が申すまでもなく時代は大きな変革期を迎えています。変革期にはモデルとなる事例は余り見あたりません。経験にどっぷり浸かるのか、それとも現実を冷静に分析することからあるべき姿を描き、時間はかかるのですが経験を含めあらゆる知恵を結集する方がよいのか、首長、議員はもちろん私たち市民も考えねばならない年だと言えます。


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Posted by 宮平栄治 at 00:04│Comments(2)沖縄経済学
この記事へのコメント
宮平先生お久しぶりです。
一期生の砂川麻子です。
また拝見しに来ます(^^)
Posted by asako at 2006年03月27日 16:52
宮平です。

砂川麻子さん、お元気でしょうか?

人生を謳歌していることと推察します。

では、また、遊びに来て下さい。
Posted by 宮平栄治 at 2006年04月03日 09:37
 
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