2006年05月14日

第133回 「”ミティゲーション”という言葉」

かつては、成長か、自然保護か、という経済成長には、いずれか一方を放棄しなければならないという二者択一論が中心でしたが、豊かな自然環境を担保した地域が豊かな人間性と感受性を育み、自然界の一員である人間にも好循環を及ぼすという考え方が根付いてきたように思われます。

さて、いったん自然環境が有していると考えられる回復力を超えて開発によって、自然環境が失われたり、損なわれると、元の姿に戻るには相当の年月と費用を要することは想像できます

では、いったいどのくらいの費用と期間が必要なのかというと・・・

実例をなかなかご紹介できずに困っていました。

5月1日の朝日新聞ホームページに、25年前、洪水防止のため直線化した1.6キロメートルの川を、蛇行した川を再現するため埋め立て、2.7キロメートルの蛇行した川の復活をさせる記事が掲載されていました。

その費用は10億円だとか、詳細は、

 「http://www.asahi.com/life/update/0501/004.html

本来、さまざまな生態系が絡み合っている川を、単なる水路というコンセプトで、三面コンクリート張りの直線河川にした金銭的費用は、上記のとおり10億円ですが、費用はそれだけではありません。

記事にもありますが釧路湿原の乾燥化、直線河川に用いた費用や再蛇行化の費用が、他の事業に利用された場合の便益である機会費用も含めると損失額は、かなりの額に及ぶことが予想されます。

最近、開発際して、自然環境への負荷を極力避ける意味で、「ミティゲーション」(mitigation)という用語が用いられるほど、自然環境への配慮が一般化されています。ミティゲーションについては、土木学会ホームページ「http://jsce.jp」をご参照下さい。

この「ミティゲーション」という言葉は、1970年代後半にアメリカ合衆国における環境政策の一貫として導入された言葉。釧路川の直線化とほぼ同じ時期です。

先進地におけるさまざまな事例を教訓にしていれば、削減される費用はまだまだありそうです。しかも、現代は、「情報社会」ですから。


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Posted by 宮平栄治 at 00:24│Comments(0)沖縄経済学
 
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