2006年07月17日

第145回 「空間経済学から考えると」

先週の火曜日(11日)と水曜日(12日)の両日、「空間経済学から見た沖縄の発展可能性について」という研究会へ参加しました。

講師は学習院大学経済学部の川嶋辰彦教授。今日は川嶋教授の貴重な講義内容をご報告します。

空間経済学以外の経済学で、たとえば、沖縄の発展を考察した場合、沖縄の労働賃金の安さ、人口規模、面積などを発展のための変数として見ていました。

空間経済学では、その変数に“空間”という概念を導入しています。

変数には、空間にとどまらず、歴史、文化などを含めることも可能です。

つまり、空間経済学以外の経済学が、無視してきた事柄、あるいは、当然としていた事柄を見直し、その役割に光を当てた経済学といえるでしょう。

さて、空間経済学から地域の発展性を人口集積との関連で考えると、人口集積は、さまざまな専門知識を有する人が集まることによる集積のメリット、そのような専門知識を有した人を集めやすいという取引費用の減少、他人に迷惑を及ぼさない限り干渉されないという匿名性などがあります。

しかし、人口の集積のメリットがある一方で、混雑、住居不足、物価上昇、機会費用の高まりによるサービス価格の高騰などのデメリットも存在します。

では、人口規模の逆概念、過疎については空間経済学で考えると、過疎をポジティブに表現すると“田園地帯”という言葉に言い換えることができます。

ご承知のように、観光地とリゾート地では目的も、役割も違います。リゾート地では、都市の雑踏を離れ、しばし現実から離れ、癒しを求める行状ができる空間となります。

リゾート地で、心地よいサービスを提供するためにはスタッフが必要となりますので、人っ子一人いない場所ではリゾートはできません。そのため、ある程度の人口集積が必要となります。

しかし、人口集積が増えると言うことは、サービスなどは充実しますが都市化を意味しますので、ある臨界点を超えるとリゾート地としての空間価値は次第に失われていくことになります。

この二つの空間概念から沖縄という地域を眺めてみると、沖縄には交通時間で2時間程度に都市空間とリゾート空間が存在していることが分かります。

つまり、人が住む場所としては、非常に恵まれた地域であるといえます。

さて、北部振興策について防衛事務次官が「沖縄県抜きで(普天間代替施設が建設される名護市周辺)の北部市町村と振興策について協議機関を設置する」(引用:『沖縄タイムス』2006年7月14日朝刊第一面)とありました。

空間経済学からは、もし、この政策が実施されると、沖縄県のメリットを分断し、将来に禍根を残す事になります。

つけ加えるなら、立ち位置を変えて見ると沖縄の発展の可能性はまだまだ広がることを空間経済学は示唆しています。


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Posted by 宮平栄治 at 17:09│Comments(0)沖縄経済学
 
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